見学会「アイヌ文化のランドスケープを訪ねて」開催報告

見学会「アイヌ文化のランドスケープを訪ねて」開催報告

 

日時:2021年11月6日(土)

見学先:民族共生象徴空間(白老町)、重要文化的景観(平取町)、平取町立二風谷アイヌ文化博物館(平取町)

レクチャー講師:堀江純子氏(アイヌ民族文化財団)、長田佳宏氏(平取町教育委員会)

コーディネート:太田広(国立研究開発法人土木研究所)

主催:日本造園学会北海道支部

協力:アイヌ民族文化財団、平取町教育委員会

 

見学会「アイヌ文化のランドスケープを訪ねて」が11月6日(土)に行われました。日本造園学会北海道支部が主催する見学会は、昨年度、新型コロナウイルス感染拡大により中止となり、今年度も感染状況が心配されましたが、北海道の感染状況は十分落ち着いていることから、感染対策をとった上で、予定通り実施されることとなりました。大学・研究機関、ランドスケープ・コンサルタント、造園建設業、学生、一般など10名の参加がありました。

 

1箇所目の見学先であるウポポイ(民族共生象徴空間)は、アイヌの歴史・文化を学び伝えるナショナルセンターとして、2020年に白老町に開設されました。ウポポイでは、国立アイヌ民族博物館等を自由見学したあと、『2020年度日本造園学会北海道支部大会研究・事例報告発表要旨/会報』の特集記事に「ウポポイとアイヌの有用植物」と題してご寄稿いただいた、アイヌ民族文化財団の堀江純子氏に「ウポポイとアイヌの有用植物」に関連してレクチャーただきました。レクチャーは、昨年度の寄稿を幅広く発展させた内容で、ウポポイの位置づけから、アイヌ文化の祭事やこれに用いる植物、これらの有用植物を入手する上での課題、また園内で再現しようしている植生や植物の展示方法の検討状況などについて、写真や資料で分りやすく紹介いただきました。レクチャー後に行われた質疑応答では、アイヌ文化では草花を楽しむ文化はあるかという問いに対して、有用植物400種以上にアイヌ名があるが、有用でない植物については名前がないということ、アイヌ文化の紹介に用いる有用植物の調達に課題があることや、周辺自然林に生育する有用植物の育成や利用、観察など含め連携への取り組みなどについて、質疑や今後への期待が議論されました。予定時間を大幅に超えて、大変中身の濃い、示唆に富む解説が行われました。

 

 2箇所目の見学先である平取町立二風谷アイヌ文化博物館では、平取町教育委員会の長田佳宏氏から、新型コロナウイルス感染対策として導入されたワイヤレスガイドの受信機、ヘッドホンを通じて、博物館やダム湖周辺の重要文化的景観については屋外で、また、博物館の主な展示物については館内で、2時間近くに渡り、大変詳しく、かつ、熱心な解説をいただきました。2007年に重要文化的景観に選定された「アイヌの伝統と近代の開拓による沙流川流域の文化的景観」では、アイヌ文化に欠かせない樹木を含む森林植生が近代以降の森林施業などにより変化していることや、アイヌ文化伝承のための活動として、植樹が続けられていることや、チセ(アイヌの家屋)の修復などが地域住民により行われている意義等について、解説いただきました。参加者からは「大変有益でした」「理解が深まりました」 「景観の考え方や針広混交林等参考になることが多かったです」などの感想が寄せられました。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年11月15日 | カテゴリー : 見学会 | 投稿者 : jilah